「人には、生まれついての役割がある。」
栄一の中で、慶喜公の言葉がずっと心に語りかけていました。
渋沢栄一、実業界からの引退を表明
この時に栄一が辞職した会社は６０以上に上りました。
栄一は、伊藤博文と会いました。
古き友は、同じ気持ちでした。
武士の世を終わらせたにも関わらず、どこか同じ武士の思考で過ごしていた。
他国をせめていいはずが無いという栄一に伊藤が答えました。
「怖かったんだ。列強国にいつ飲み込まれてしまうだろうか。その恐怖が戦争に駆り立てたんだよ。」
栄一は、伊藤にアメリカ行きを伝えました。
民間外交。
栄一が手探りで見つけようとしている「自分の役割」でした。
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青天を衝け 第４０話「栄一、海を超えて」 あらすじ
栄一たちは、９１日間をかけて全米６０都市を訪問しました。
各地の視察のほか、７０回に迫る多くの講演や演説を行いなう超過密スケジュールでした。
日本女子学校に在籍していた兼子の姪も自ら志願して随行しました。
日本女子大学も数ある栄一が力を入れた学校の一つですね。
旅の途中で、栄一はペンシルベニアに続くテキサスやカリフォルニアの産油地を目にしました。
これからの「石油」時代の流れを感じ取りました。
実業家と大学教授、それに記者からなる「渡米実業団」は、各地で工場やエネルギー施設、農場や大学、福祉施設と多くの設備を見て廻りました。
栄一は、ペリー提督の墓に加えて、日本で接待したグラント将軍の霊廟にも立ち寄り、手を合わせました。
多くを見たい栄一は、ある時一人抜け出し見学したまでは良かったが、駅に戻ると電車が無かったと周りを慌てさせることもありました。
一行が危惧していた「反日感情」をあまり体験することはありませんでした。
それは、西海岸を電車が通っていなかったことだったようでした。
低賃金でもしっかりと働く日本人は、アメリカ人の一部からは自分たちの権利を奪う敵のように見えました。
栄一は、民間人として渡米したにも関わらず、現職のアメリカ大統領タフト氏とも面談しました。
その中で大統領が話した表現に栄一は強い悲しみを感じました。
その言葉は「平和の戦争をしましょう。」
口に出した大統領に悪気はありませんでした。
「商売の戦い」を表したかっただけでした。
共に良い商品を生み出して、競い合いたいと言いたかったことだったのですが。
栄一は、考え込んでしまいました。
「戦争」「争い」これらの言葉に危惧する栄一に追い討ちをかける急報が届きました。
伊藤博文 韓国 ハルビンで暗殺される
カリフォルニアに到着する栄一に対して、周囲の人々は商工会議所での講演の中止を提案しました。
栄一は、登壇しました。
そして、講演の中で栄一は心の叫びを聴衆に伝えました。
大切な友人でもある伊藤博文の死、今日に至るまでの多くの友の死を伝えました。
「なぜ殺し合うのか。」
「それは、相手を知らないからでした。」
「相手を知ろうと本気で向き合わなかったからでした。」
「今回の旅では、多くのアメリカ人の真心に触れ、とてもよくしていただいている。」
「同じように、多大な愛情をアメリカが日本に注いでくださっていることに感謝しています。」
「だからこそ申し上げたい。日本人はアメリカの敵ではありません。日本人移民は、広大なアメリカの地を労働者として役立ちたいとやってきています。憎まないでください。」
栄一は続けました。
「大統領は平和の戦争とおっしゃったが、あえて言いたいのです。」
「戦争はダメだ！」
この言葉は、多くのアメリカ人から賛同を得ることができました。
栄一の3ヶ月に及ぶアメリカ民間外交の旅は終わりました。
一月が過ぎて篤二が再び迷走しました。
家を飛び出し、遊女と駆け落ちしてしまいました。
姉歌子は悲しみに打ちひしがられました。
後見人であり、歌子の亭主である穂積も栄一に合わせる顔がないと喪失感に包まれました。
栄一は、決心しました。
同族を集め、遺書を読み上げました。
篤二を廃嫡すること。篤二の持つ資産は名義替えし妻敦子にすることが集まった人々に伝えられました。
篤二の息子、栄一の孫敬三は昆虫を観察することが大好きな青年でした。
喜作は、そんな敬三が好きで可愛がりました。
「篤二は頑張ったよ。本当に頑張ったよ。ただ、栄一の後を継ぐ実業家に向いていなかったんだよ。」
「栄一は、近くにいる人間に引け目ばかりを感じさせるところがある。」栄一のそばにずっといた喜作らしい言葉で敬三に語りました。
１９１２年 明治天皇 崩御
大正 元年
喜作と栄一は、久しぶりに血洗島を尋ねました。
しばらくして・・・
渋沢喜作、大正元年 ７４歳 生涯を終える
慶喜公の伝記編纂が出来上がりました。
栄一は、慶喜公に感謝を伝えました。
慶喜公は「渋沢の有耶無耶なことへの答えにもなっただろうか？」尋ねました。
パリから慶喜へ直訴したことなど全てお見通しの慶喜だったのでした。
改めて栄一は、慶喜公へ頭を下げました。
生き続けて良かった。
生きてくれて良かった。
二人が同じ気持ちでした。
「感謝している。共にいてくれて感謝している。」
栄一への慶喜の最初で最後の感謝の言葉でした。
徳川慶喜公 七十七歳の天寿を全うしました。
罰だったのか、ご褒美だったのか、歴代の徳川将軍一の長寿でした。
中国の革命家 孫文が栄一に会いにやってきました。
栄一は答えました。
「戦争のためではなく、中国経済のためにならば喜んで力になりましょう。」
しかし、孫文は次第に国内の内紛に巻き込まれていきました。
また、世界全体を巻き込んだ「第一次世界大戦」が始まってしまいました。
栄一は、戦費等協力を求めてきた政府に対して、真っ向から批判しました。
日本は、日英同盟に基づきドイツに先制布告しました。
世界大戦へ参加の道を歩み出しました。
アジアの次は欧州での日本の権益を期待すた井上馨は、戦争での日本の活躍を期待しながら、世を去っていきました。 享年80歳でした。
正装をした栄一が、孫の敬三を訪ねました。
昆虫や動物の研究をする道へ進もうとする敬三でした。
栄一は、敬三へ「法科」への進学をお願いしました。
敬三に実業界へ進み、栄一の跡を継いでもらいたいと懇願したのでした。
世界大戦の最中に、日本は世界各地へと勢力を拡大することに成功しました。
また、ロシア革命が起きたことからシベリアへも出兵しました。
青天を衝け 第４０話「栄一、海を超えて」 感想
息子篤二の件。
前回も書きましたが、名士の子供には辛い時期だったのです。
とてつもない大きな期待。
事業で言うならば、起業する能力が会社創設期には必要。
安定した時に必要な社長の能力は維持力に移行する。
しかし、篤二のころ、明治時代は、起業能力と維持力の２つが必要な稀な時代だったのではないかと推察します。
周囲は、なんといっても明治初期から名士を見ている人々ですから、嫡男にもそういった起業家的な引っ張っていく、難題に突き進む気概を期待したことでしょう。
辛かったでしょうね。
慶喜公と栄一
栄一をはじめ、多くの旧幕臣の人々が、徳川慶喜の東京への帰宅と汚名の返上を期待していたようです。
その集大成が伝記だったことは、別件を調べているときに知りました。
相当大掛かりに人も集められたようです。
確かに実質的な日本のトップ、ある意味の一国一社である社長が、社員と家族を地方の大きくなった営業所の裏工作から守ろうと、社長を辞任して倒産の危機を穏やかなソフトランディングに修正したのですからすごいことです。
栄一に長い間の労をねぎらう言葉をかける慶喜公。
吉沢亮さんと草なぎ剛さんの迫真のやりとりは、「厳か」であり、美しい場面だったと感じました。
ぜひ多くの方々に直にご覧いただきたいシーンです。
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２０２１年 NHK大河ドラマ「青天を衝け」キャスト
主要キャスト
| 配役 | |
| 渋沢 栄一 | 吉沢 亮 |
| 澁澤 喜作 | 高良 健吾 |
| 尾高 惇忠 | 田辺 誠一 |
| 徳川 美賀子 | 川栄 李奈 |
| 徳川 慶喜 | 草彅 剛 |
| 徳川 家康 | 北大路 欣也 |
| 小栗 忠順 | 武田 真治 |
| 尾高 平九郎 | 岡田 健史 |
| 天璋院 | 上白石 萌音 |
| 井上 馨 | 福士 誠治 |
| 渋沢 ゑい | 和久井 映見 |
| 伊藤 俊輔 | 山崎 育三郎 |
| 大久保 利通 | 石丸 幹二 |
| 渋沢市郎右衛門 | 小林 薫 |
| 尾高 千代 | 橋本 愛 |
| 佐々木勇之助 | 長村 航希 |
| （平岡円四郎の妻）やす | 木村 佳乃 |
| 明治天皇 | 犬飼 直紀 |
| 板倉 勝静 | 永井 秀樹 |
| 岩倉 具視 | 山内 圭哉 |
| 杉浦 愛蔵 | 志尊 淳 |
| 徳川 昭武 | 板垣 李光人 |
| 五代 友厚 | ディーン・フジオカ |
| 大久保 一翁 | 木場 勝己 |
| 大隈 重信 | 大倉 孝二 |
| 三野村利左衛門 | イッセー尾形 |
| 徳信院 | 三村 里江 |
| 三条 実美 | 金井 勇太 |
| 大隈 綾子 | 朝倉 あき |
| 萩原四郎兵衛 | 田中 要次 |
| 大隈 重信 | 大倉 孝二 |
| 渋沢 よし | 成海 璃子 |
| 渋沢 てい | 藤野 涼子 |
| 大内 くに | 仁村 紗和 |
| 江藤 新平 | 増田 修一郎 |
| 小野善右衛門 | 小倉 久寛 |
| 岩崎 弥太郎 | 中村 芝翫 |
| 井上 武子 | 愛希 れいか |
| 益田 栄子 | 呉城 久美 |
| 大倉 徳子 | 菅野 莉央 |
| 井上 未子 | 駒井 蓮 |
| 大倉喜八郎 | 岡部 たかし |
| 益田 孝 | 安井 順平 |
| 岩崎 弥之助 | 忍成 修吾 |
| 伊藤 兼子 | 大島 優子 |
| 穂積（渋沢） 歌子 | 小野 莉奈 |
| 穂積 陳重 | 田村 健太郎 |
| 阪谷 芳郎 | 内野 謙太 |
| 孫文 | 東 浩 |
制作キャスト
| 作 | 大森 美香 |
| 音楽 | 佐藤 直紀 |
| テーマ音楽演奏 | NHK交響楽団 |
| 語り | 守本 奈実（アナウンサー） |
| 演出 | 黒崎 博 |
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